あんみつの文法/虎屋菓寮 赤坂本店


「あんみつ」という一個の独立した食べ物の必然性を初めて理解した。
いままで名店といわれる甘味処で餡蜜を食べたことは何度もあったが、餡蜜を構成するパーツ、パーツを食べていただけで、なぜそれらが一皿に供されるのか、「あんみつ」の必然は私にとっていままで全くの謎であった。
虎屋の「あんみつ」は、ごくごく自然に「あんみつ」であった。
それぞれのパーツの味わい、食感がしっかりとあって、
「あんみつ」としての全体がある。
こんなに明晰な食べ物だとは思ってもみなかった。
外国語の構文解釈の明快な説明を聞いてやっと理解できたときの感覚に近い。
「なんだ、そういうことだったのか。
(だったら、初めからそういってくれればいいのに…)」

これからは他の店でも「あんみつ」を楽しめるだろうと思う。