頓着
戸板康二さんの「ちょっといい話」シリーズの何冊かは、志ん生集やケストナーのザルツブルク日記なんかと並んでベッドサイドに置いてある。酔っていたり、気持ちが乗らないときでも、手に取れば読めるからであって、それはそれで、たいへん得難い筆力であるなあと、近頃思う。芸人についての文章が多いので、どうしても内容が古びてしまうのか、文春文庫で手頃に入手できないのが残念である。
さて、ちかごろ気になるのは、菊池寛と正宗白鳥である。お二人にはたいへん申し訳ないが、彼らの文学作品ではなく、かれらご自身に興味があるのである。いや昔から、うすうす変だとは思ってたんだ…。
菊池の秘書だった佐藤みどりさんによれば、夜行列車で大阪からの帰りに、洗面所ではずした入れ歯がなくなったといって大騒ぎをしたあと、靴をぬいだら、底から出てきた。
「あったよ」「履いていてわからなかったんですか」というと、「だって、そんなとこにあるはずがないと思っているから」。
「新々ちょっといい話」は後半が「人物風土記」で、その地にゆかりの人たちのいい話がまとめてあるので、とくにオススメである。菊池寛は香川、正宗白鳥は百間先生と同郷、岡山のご出身である。
頓着、無頓着ということについてしばし考えるものがあった。
- 作者: 戸板康二
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1987/04
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: 佐藤碧子
- 出版社/メーカー: 新風舎
- 発売日: 2003/09
- メディア: 単行本
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (1件) を見る